濃尾平野の地史(3)

第一瀬戸内期の濃尾平野

東北裏日本から現在の富士火山帯に連なる地域は、第三紀前半を通じて浸食され続けていたが、第三紀後半の中新世の初めになると急に沈降しはじめ、火山活動と堆積作用の地域となった。
これにややおくれて、西南日本内帯では、中央構造線の北に沿う地域と、北陸から山陰にかけての地域とが沈降し,堆積作用の行なわれる区域となった。このうち、中央構造線に沿う地域は、堆積の範囲と環境とが現在の瀬戸内海と似ているので、瀬戸内区と呼ばれている。また瀬戸内区の中新世の地層の堆積した時期を第一瀬戸内期と呼んでいる。
第一瀬戸内期には、鳳来寺山を含む設楽盆地、岐阜県東南部の瑞浪盆地、知多半島南端、三重県の一志盆地などに堆積盆地が生じて、暖い浅海の堆積物がたまった。濃尾平野の周縁地域の瑞浪、知多半島南端、三重県菰野町付近、豊田市猿投町八草付近で海成の中新世の地層が露出している。

また濃尾平野内部では深いボーリングによって、海成の中新世の地層がみつかっている。知多半島基部の大府町内の深層ボーリングでは、知多半島南端の中新世の地層ときわめてよく似た頁岩が只化石を含んだままで採集された。
三重県菰野町付近の中新世の千種層は瑞浪盆地の地層とよく似た岩相と化石をもっている。これらの事実から濃尾平野の地下にある第一瀬戸内期の地層を推定すれば、砂岩・泥岩の互層に凝灰岩を伴う浅海の堆積物がゆるやかな傾斜で広がっているであろう。
ただし、鮮新層が撓曲や断層で変形しているところでは、そのさらに下位にある中新世の地層も断層運動などで複雑な構造をつくっているであろう。中新世の末頃、第一瀬戸内期の各堆積盆地は地殻変動により、単純な変形作用を受けて隆起した。
中新世に堆積した地層中には、暖かい浅海の底にすむ動物の化石が含まれ、それらの堆積盆地はたがいによく連絡した海であったらしい。

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