既往の水害について注意を払うことは、地域計画、建築計画のうえから大切である。
名古直における代表的水害といえば、昭和34年9月26日の伊勢湾台風を思いださせるが、名古屋はその南部、西部に低平地が発達し、しかも伊勢湾の奥深く位置しているため、高潮の災害をうける可能性をもっている。
名古屋における高潮被害の歴史をふりかえると、大正期には伊勢湾台風以前の名古屋港最高潮位記録を作った台風が、大正10年9月25日、紀伊半島から日本海へぬけ、最高潮位T.P.+2.97mを記録している。
最近では,昭和28年(台風13号)と、昭和34年(伊勢湾台風)に二つの高潮を経験している。昭和28年9月25日の台風13号は、大潮時に伊勢湾の南部を北東へ横断した。このときの名古屋港最高潮位はT.P.+2.87mで、南、港、中区では一部が浸水、山崎川などが氾濫し、浸水家屋は44500戸に及んだ。
昭和34年9月26日の伊勢湾台風は、瞬間風速60m/secにおよぶ強風とともに、わが国最高記録のT.P.+3.89m(N.P.+5.31m)の高潮を示した。このため伊勢湾北部臨海低地はいたるところで浸水し、長期にわたり湛水した。名古屋市域についていえば,浸水面積120km2で市域全面積250km2の半ばに達し、死者2000名,負傷者7000名、全半壊流失家産54500棟におよんだ。